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PIC条約(ロッテルダム条約)は「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約」というのが正式名称です。
有害化学物質の国際貿易に関する取り決めで、国際取引の際に輸入国へ事前通報、同意手続きを行うことを求める制度です。事前通報・同意手続き(Prior Informed Consent)の頭文字をとり、PIC条約といいます。
この条約は、特定の有害な化学物質の特性についての情報の交換を促進し、当該化学物質の輸入及び輸出に関する各国の意思決定の手続を規定し並びにその決定を締約国に周知させることにより、人の健康及び環境を潜在的な害から保護し並びに当該化学物質の環境上適正な使用に寄与するために、当該化学物質の国際貿易における締約国間の共同の責任及び協同の努力を促進することを目的としています。
かつて、開発途上国では有害な化学物質や駆除剤の使用するにあたって、法的に整備されていないことが多くあり、先進国ですでに使用禁止もしくは使用が制限されたものが、開発途上国で使用され、労働者や消費者の健康被害や環境汚染を引き起こした例がありました。この状況を改善するために国際取引の際に各国で情報交換をするシステムが検討されてきました。
有害な化学物質の輸入を各国に事前通報し、同意を求める制度は1989年に「国際貿易の対象となる化学物質に係る情報交換に関する国際連合環境計画(UNEP)の改正ロンドン・ガイドライン」及び「駆除剤の流通及び使用に関する国際連合食糧農業機関(FAO)の国際行動規範」に導入され、多数の国で実施されてきました。
1992年にリオデジャネイロで開催された「地球と環境に関する国連会議(通称、地球環境サミット)」で地球上において環境と調和しつつ繁栄を続けていくために必要な行動計画であるアジェンダ21が採択されました。アジェンダ21の第19章で「有害化学物質および化学リスクに関する情報交換」が課題としてあげられ、早期の対応を求められてきました。
1995年の国際連合環境計画(UNEP)第18回管理理事会において、条約化のための外交交渉が開催され、1998年ロッテルダムで開催された外交会議でロッテルダム条約が採択されました。2004年締結国が50カ国に達し、ロッテルダム条約が発効しました。
国際貿易の対象となる有害な化学物質から、人(労働者、消費者)の健康や環境を保護する観点より、有害な化学物質を輸出するにあたって、輸入国政府の輸入意思を確認した上で輸出を行うことになっています。
PIC条約では「禁止された化学物質又は厳しく規制された化学物質」と「著しく有害な駆除用製剤」が適用となっています。
以下の項目はPIC条約の適用外となっています。
1 | 麻薬及び向精神薬 |
2 | 放射性物質 |
3 | 廃棄物 |
4 | 化学兵器 |
5 | 薬品(人及び動物用の医薬品を含む。) |
6 | 食品添加物として使用される化学物質 |
7 | 食品 |
8 |
次の化学物質であって人の健康又は環境に影響を及ぼすおそれのない量であるもの |
化学物質および駆除剤についてPIC条約にて以下のように定義されています。
生物以外の物質をいい、その物質のみから成るものであるか混合物に含まれるものであるか調製されたものに含まれるものであるかを問わず、及び製造されたものであるか自然から得られたものであるかを問わない。「化学物質」は、「駆除剤(著しく有害な駆除用製剤を含む。)」及び「工業用化学物質」の分類から成る。
人の健康及び環境を保護するため、少なくとも上記の分類においてすべての使用が最終規制措置によって禁止された化学物質をいう。その最初の使用が承認されなかった化学物質、産業界が国内市場から回収した化学物質又は産業界が国内の承認手続における承認の申請を撤回した化学物質であって、人の健康及び環境を保護するためにそのような措置がとられたことについて明白な証拠があるものを含む。
人の健康及び環境を保護するため、少なくとも上記の分類において実質的にすべての使用が最終規制措置によって禁止された化学物質であって、特定の使用に限り認められているものをいう。実質的にすべての使用について、承認されなかった化学物質、産業界が国内市場から回収した化学物質又は産業界が国内の承認手続における承認の申請を撤回した化学物質であって、人の健康及び環境を保護するためにそのような措置がとられたことについて明白な証拠があるものを含む。
駆除剤として使用するために調製された化学物質であって、その使用の条件の下で、一回又は二回以上のばく露の後短期間に観察され得る著しい影響を健康又は環境に及ぼすものをいう。
輸入に関する義務
締結国は事務局に当該化学物質の将来の輸入の可否に関する書類を送付する。
輸出に関する義務
事務局は輸入の可否に関する回答をすべての締結国に通報し、その回答内容に 含まれる決定に従うことを担保するよう国内法整備を行うこと。
締結国は自国において独自に禁止または厳しく規制された化学物質が輸出される場合には、輸入国に対して、輸出の通報を行う。その場合、人への健康や環境への有害性や危険性に関する情報を十分提供できるようラベルやSDSの添付が必要である。
②日本が独自に禁止または厳しく制限している物質(最終規制措置対象物質)
・化審法 第1種特定化学物質
・労働安全衛生法 製造禁止物質
・毒物及び劇物取締法 特定毒物
・農薬取締法 販売禁止農薬
PIC条約の対象物質は輸出貿易管理令別表第2の35-3項に指定し、輸出承認の対象としています。対象物質を輸出する場合は輸出貿易管理令に則り、経済産業大臣の承認が必要です。
経済産業省 PIC条約ホームページ
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/pic.html
外務省 PIC条約ホームページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/rotterda.html
環境省 PIC条約ホームページ
https://www.env.go.jp/chemi/pic/treaty.html
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